何かと話題が尽きないフィリピンの大統領、ロドリゴ・ドゥテルテさん(Rodrigo Roa Duterte)。あまり海外ニュースや政治に詳しくない方でも名前を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?
中国やロシアに対して物怖じしない強気な態度をとったり、元アメリカ大統領オバマ氏を放送禁止用語で罵倒したり。
なかでも、フィリピン国内で既に多くの逮捕者と死者を出している「麻薬撲滅戦争」は海外から大きな非難を浴びています。それにも関わず、フィリピン国内での大統領の支持率は80%以上にも上ると言われています。
今回の記事では、ドゥテルテ大統領任期中のフィリピンの状況、私が2か月間フィリピン過ごした間に感じたことをお伝えします。
ドゥテルテ大統領の経歴
ドゥテルテ大統領は、1945年3月28日フィリピンのレイテ島生まれました。
若いころは喧嘩に明け暮れ、何度か刑務所に出入りをしたこともあるほどのやんちゃ坊主だったそうです。
1988年にダバオ市長に当選し2016年まで務めました。ドゥテルテの市長任期中には、ダバオでは自警団が結成され、その自警団のメンバーは犯罪者を私刑(死刑ではありません)にしていたそうです。これは市長の暗黙の了解の下で行われていたと言われていますが、ドゥテルテは否定しています。ただ、後々、市長時代にドゥテルテ自らが大型バイクでパトロールをして犯罪者を殺していたと話しています。
それが理由かどうかはわかりませんが、ダバオは驚くほど治安が改善し経済も好景気になりました。
私自身はダバオに行ったことがないですが、ダバオに行ったことがある私のフィリピン人の友人たちは、「あそこは同じフィリピンとは思えないほど、きれいで規律的で安全だ。」と語っていました。
そして2016年、ドゥテルテは遂に第16代フィリピン大統領就任しました。
ドゥテルテ大統領の暴言?名言?
ドゥテルテ大統領と言えば強気な発言で有名ですが、どのような暴言(名言?)を言ってきたか、少し紹介したいと思います。
オバマ元大統領に対して
「敬意を示せ。ただ質問やコメントを言いたい放題するんじゃない。売春婦の息子(son of a bitch)め、その場所で罵倒してやる」
出典オバマ氏、フィリピン大統領との会談中止 母親を「売春婦」と – BBCニュース
アメリカ政府に対して
「私は戦いを望んでいるわけではない。だが、あいつらばかな米国人は弱い者いじめをする。いじめっ子で、厄介な害虫だ」
出典「嫌なら外国企業は出て行け」比大統領が米に反発 日本は礼賛 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News
欧州議会(European Parliament)に対して
「なんでわれわれにかかわりあう?いまいましい」
出典ドゥテルテ比大統領、欧州議会の議員らを「頭のおかしいやつら」と非難 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News
市長時代の殺人報道に対して
「昨日から米CNNや英BBCなどのテレビニュースで、ドゥテルテが犯罪者を殺したり撃ったりしたことを認めたなどと流れているが、これらに関して皆さんが困惑しないようにしておこう。それらの報道に間違いはない」
出典ドゥテルテ比大統領、市長時代の容疑者殺害に開き直り 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
金正恩に対して
「(核兵器という)危険なおもちゃで遊ぶばか(fool)だ。常軌を逸している」
「丸々と太った顔は親切そうに見えるが、ろくでなし(son of a bitch)だ」
出典金正恩氏「常軌逸している」=比大統領が罵倒:時事ドットコム
南シナ海でフィリピン領を侵犯する中国について
「今は、判決についてわめき散らすことはしない。だがいずれ、このことについて中国に何らかの落とし前をつけてもらう時が来るだろう」「私が保証する。ここに入り込もうものなら、血塗られたものになるだろう。われわれは簡単には屈しない」
出典比大統領、中国に「落とし前をつけさせる」と警告 南シナ海問題 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
国連に対して
「売春婦の息子(son of a bitch)」
出典オバマ氏、比大統領に忠告 犯罪との戦いは「正しい方法で」 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
国連の潘基文 元事務総長に対して
「もう一人のばか者」
出典比大統領、オバマ氏侮蔑を否定 今度は国連総長を「ばか者」と呼ぶ 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
麻薬常習者に対して
「なぜ国連はわが国の問題に安易に干渉してくるのか。(殺害したのは)たった1000人だ」
出典殺害したのは「たった1000人」 比大統領が国連の批判に反論 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
大統領選での演説
「麻薬に手を出したやつは殺す。本当に殺すからな」
出典比次期大統領、一般人にも麻薬密売人の殺害奨励 報奨金1100万円 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
ローマ法王フランシコ1世に対して
「売春婦の息子(son of a bitch)」
出典ぎこちない一瞬……オバマ氏とドゥテルテ氏が壇上で並び 目と目が – BBCニュース
いかがでしょうか?
オバマ元大統領に「son of a bitch」と言ったのは知っていましたが、いろんな人に言ってたんですね・・・。
メディアは全体の話の流れの一部を切り取ってレポートするので、一部だけを見て判断してはいけませんが、暴言王と言われるのも納得の発言ですね。
ドゥテルテ大統領が指揮している「麻薬撲滅戦争」とは
フィリピンでは長年、麻薬問題がはびこっています。
これを一気に撲滅しようとドゥテルテが導入したのが、「超法規的殺人」です。
わかりやすく言うと、裁判を通さずとも、麻薬に関わっている人であれば殺してもよいというルールです。
道端で麻薬を売っている人を見つけた場合、その人を殺しても罪に問われません。
罪に問われないどころか報奨金まで出ます。
報奨金は、殺した相手によって変わります。
麻薬組織の幹部を殺した場合は約1000万円、密売人を殺した場合は約600万円というぐあいです。
驚きなのは、これは警察官だけに与えられた特権ではないということです。一般の人たちも、麻薬関連者を見つけた場合、殺しても罪に問われず報奨金をもらえます。
そんな「麻薬撲滅戦争」で殺さる人の数は年間5,000人以上、刑務所に入れられた人の数は10万人近くと言われています。
急激な逮捕者数の数で、刑務所は異常事態に。定員約1,000人の刑務所に3,000人以上の受刑者が収容され、寝るところもないような劣悪な環境になっているようです。
クレージージャーニーという番組で、丸山ゴンザレスさんがフィリピンの刑務所に行った回を見られた方もいるかもしれませんね。
海外からのドゥテルテ大統領の評価
フィリピンの「麻薬撲滅戦争」に関しては、様々な国や国際機関から人権侵害であるとの非難がたくさん集まっています。特に国連や国際人権団体、欧米の国はこぞってドゥテルテを非難。これらの非難に対しても、ドゥテルテ大統領は暴言(名言?)で対抗しています。
「国連がそんな無礼な態度をとるなら我々は脱退するだろう。お前らは愚かだ。お前らが正しいのなら世界中の戦争はとっくに無くなっている。」
確かに、一理ありますね。ドゥテルテからすれば、「過去にフィリピンを植民地にしたスペインやアメリカ、インディアンを虐殺して国を作ったアメリカが、人権侵害なんてよく言うな」という感じなのかもしれません。
とにもかくにも、海外からドゥテルテ大統領の評価はマイナスのものしかありません。
フィリピンが抱える問題とドゥテルテ大統領の支持率
海外からは非難ごうごうのドゥテルテ大統領ですが、フィリピン国民からの支持率(2019年)は80%ちかくもあります。海外からは批判しかないことを考えると、びっくりするような支持率ですね。
私は、2018年9月から2か月ほどフィリピンに滞在しました。
支持率は本当なのかなという興味があったので、滞在中に知り合いになった人には必ず「ドゥテルテ大統領をどう思う?」と聞いていました。
私が聞いた限り、彼を悪くいう人は一人もいませんでした。北朝鮮やタイのように国家元首に対して批判的なことを言ったら罪になる、というようなことはフィリピンではないので、彼らの言葉は嘘ではないと思います。ドゥテルテ大統領のことを話すときの彼らの笑顔が印象的でした。
フィリピンの経済状況
フィリピンの経済はどんどん発展しているといっても、中流階級以上の人はまだまだ少なく、貧富の差も激しいです。首都マニラだけではなく、他の地域でもスラム街をよく見かけることがあります。
私が滞在していたパラワン島の州都プエルトプリンセサは、すごく治安が良く平和な良い場所でしたが、経済の面でいうと地方になるので収入は低い人が多いです。プエルトプリンセサの最低日給は300ペソ(約600円)。私の友達も日給300ペソのハウスキーパーとしてホテルで働いています。
ほぼ休みなく働き、1か月2万円弱を手に入れます。いくらフィリピンの物価が安いといっても、楽に生活できる収入ではありません。しかも彼は奥さんと子供一人もいるので、彼の収入だけでは生活を賄いきれません。
彼の実家は、パラワン島の南部の町エスパニョーラというところです。
安い最低賃金がパラワン島の郊外の地域まで行けば更に下がります。最低日給はプエルトプリンセサの半分、約150ペソ(300円)程度です。仕事が見つかれば良いほうで、仕事が見つけられない人も多いということです。そのため、彼はプエルトプリンセサまで働きに出て、奥さんは地元に残り古着屋をやっているそうです。
月に1回、バスで片道約6時間かけて子供の顔を見に行くのが楽しみと話してくれました。
また私の英語の先生をしてくれていた女性もパラワン島の郊外ロハスという町から出てきて、プエルトプリンセサで働いていました。子供は、ロハスの実家に預けてです。
日本では、子供や家族との時間を大切にしようという対策が官民で始まっていますが、フィリピンでは親子や夫婦が離れてくらすことは珍しくはありません。
もちろん、寂しく感じる人が多いのも事実ですが、お金を稼ぐためなら躊躇をしない人も多いです。
このように経済状況がよくないフィリピンで人気なのがコールセンターの仕事です。
おそらく、世界で一番コールセンター事業が盛んな国ではないでしょうか。
彼らが受け取る電話はアメリカやヨーロッパ、オーストラリアなどの先進国の消費者からです。フィリピン人は、過去のアメリカの植民地だった歴史から、ほとんどの人が英語を話すことができます。
英語はタガログ語とともにフィリピンの公用語になっています。
英語が話せて人件費は安いという願ってもない環境のため、たくさんの大手コールセンター企業がフィリピンに進出しています。
コールセンターではどこの国の消費者を担当するかを決め、その後訓練に移ります。というのも、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど、同じ英語でも国によってアクセントや発音が大きく違い、担当国に見合った訓練が必要だからです。
フィリピン人の英語はアメリカンイングリッシュです。私の英語の先生もコールセンターで働いており、オーストラリア担当になりました。最初は、お客さんの言っていることが半分くらいしか分からなくて落ち込んでいました。ただでさえアクセントや発音が違うのに、電話越しの会話ということと、感情的になっているお客さんが多いということで通常のリスニングよりはかなりハードです。
またお客さんの国がアメリカ、ヨーロッパが多いということは、時差の関係があります。
多くのコールセンタースタッフが午後6~7時ごろに出勤し、朝まで働くという夜勤耐性になっています。
そんなハードなコールセンターの仕事ですが、入社時の初任給は9,500ペソ(約19,000円)です。プエルトプリンセサの最低日給300ペソ×30日とほぼ同じ数字です。
ハードで低賃金でもコールセンターが人気の理由は2つあります。
一つ目は、各地域間の最低賃金の格差です。先ほど、パラワンの郊外地域とパラワンの州都プエルトプリンセサでは最低賃金に2倍の格差があると説明しましたが、プエルトプリンセサとマニラにも賃金格差があります。プエルトプリンセサの最低日給は300ペソ(600円)ですが、マニラになるとこれが500~550ペソ(1,000~1,000円)になります。
大手のコールセンターはフィリピン各地に支店を持っているので、マニラに異動なれば給与はいきなり約2倍ちかくになるということになります。実際に私の友達の一人もバコロドからマニラに異動しました。それでも最低賃金であることには変わりはないのですが。
二つ目は、各コール―センター企業の本拠地への異動のチャンスがあるということです。仮にアメリカ内の支店に異動することができれば、最低でも月給20万円はもらえるでしょう。彼らにとれば、夢のような数字です。
こういった理由もあり、フィリピンでは多くの人がコールセンターで働いています。
どれくらいの人がコールセンターで働いているか正確な数字はわかりませんが、私が出会った人の10人に1人くらいはコールセンターで働いているように思います。
またフィリピンは、出稼ぎ国家として有名というのを聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?フィリピンの人口は約1億人。その1%にあたる約1,000万人が海外に出稼ぎに出ています。
これはもちろん、フィリピン国内での経済状況の悪さから起こっていることです。フィリピン人は英語ができるので、海外に出稼ぎにいきやすいということも後押ししています。
彼らが、海外で働いて稼いだお金を母国フィリピンの家族に送金する(2016年の総送金額は約3兆円)。家族がそのお金を使う。ということでフィリピンの経済に及ぼしている良い影響は少なくありません。
ただ海外出稼ぎに関しては問題も少なくはなく、もっとも大きな問題になっているのが人材流出です。
出稼ぎに行った人が将来お金持ちになってフィリピンに戻ってきてくれればよいのですが、母国には戻らず、出稼ぎ先の国で定住してしまう人も少なくありません。そうなれば、優秀な人がどんどんフィリピンからいなくなり、長期的にみればフィリピンの国力が弱くなってしまいます。これは同じ出稼ぎ国家ネパールでも大きな問題になっています。
日本では現在、少子高齢化が進み、労働者が足りなくなっているというのが問題があります。企業団体の強い要請もあり、日本政府は海外から人材を補充するための対策を打ち始めています。
建築業や飲食業、農業などいろんな業界で人手不足が叫ばれていますが、フィリピンからは看護業界で働く人を重点的に募集しています。
しかし、日本や他の国へフィリピンの看護師が出稼ぎにいけばいくほどフィリピン国内では反対にナース不足なっているという現実があります。
少し話は変わりますが、あるときフィリピンの友達に言われたことがあります。
「なんで日本人は自分で親の面倒を見ないんだ?見ず知らずの外国人の俺たちが面倒を見るっておかしくないか?」
怒って言っているのではなく、あきれたように言ってました。
私の中にも反論は色々ありましたが口にはしませんでした。
彼の言葉が真実をついていたからです。
フィリピンの治安状況
フィリピンのもう一つの大きな問題点として治安があります。
フィリピンは東南アジアの中で見れば1、2を争うほど治安が悪く、世界全体で見てもかなり悪い方です。
一口に治安が悪いと言っても、すりや窃盗の軽犯罪から殺人などの重犯罪、政治的なものによる紛争など色々あります。他の東南アジア諸国と比べて、殺人率が高いのがフィリピンの治安の悪さの特徴です。また麻薬の使用率も非常に高いことも問題になっています。
フィリピンと言えば、セブ島が旅行先や英語留学先で有名です。リゾート地で安全なイメージがありますが、データでみると治安の悪さは首位マニラに次いで2位になっています。
現地で聞いた情報によると、日本では報道されていない外国人が被害者になった凶悪な殺人事件もけっこうあるそうです。何故報道されないかは謎ですね。
また、マニラ空港(ニノイ・アキノ空港)が何度も世界ワースト1位空港の汚名をとっているのも有名な話です。空港の利便性や設備などの悪さも原因なのですが、一番の理由は空港職員の恐喝でした。
空港職員が乗客の手荷物にこっそりと銃弾を忍び込ませて、それをわざとらしく発見。見逃してほしければ金を払えというものです。
私は外国人のみがターゲットになっているのだと思っていましたが、現地で聞いた情報によるとフィリピン人も被害にあっているようです。ただ、空港職員も考えているらしく、乗客の身なりを見てお金を持っていそうな人だけをターゲットにしているそうです。
長年問題になっていたこの空港での恐喝事件も、ドゥテルテが大統領になってからはほぼ無くなりました。
一番の問題である麻薬に関しては、世界の中でトップレベルの使用率になっています。国民の50人に1人が薬物を使っていると言われています。
私は以前、ネグロス島バコロドの友人とスラム街へ訪問したことがあります。そこは、細かい路地が入り組んで迷路のようになっており、ほったて小屋のような小さな建物の中に若者がろうそくを囲んで座っていました。彼らは目がうつろになりながらスプーンの上で何かをあぶって吸い込んでは宙を見上げることを繰り返していました。
私がその若者に、それは何かと尋ねたところ、彼は「シャブ(覚せい剤)」と答えました。
「シャブ」というのは日本語じゃないの?私も詳しい知識はなかったため、確信はありませんでした。
その後ホテルに帰りシャブの語源を調べたところ、シャブという言葉は
「骨の髄までシャブられる。」
というところからきており、やはり日本語でした。
何故、日本語の「シャブ」がフィリピンで使われているか?
麻薬には、コカインやヘロインやLSDや覚せい剤(シャブ)など様々な種類がありますが、覚せい剤が主流になっているのは世界でフィリピンと日本だけです。
日本の暴力団が利益拡大のため、90年代以降に覚せい剤をフィリピンに密輸し始め「シャブ」という名とともに広がったようです。
フィリピンの麻薬問題、海外から批判されている「麻薬撲滅運動」は日本とは無関係ではないということですね。
経済と密接に関係している治安問題
治安の悪さと経済は密接に関係してきます。
とくに麻薬に関しては、どの国もやっきになって対策をしています。
それは、麻薬の裏には麻薬を牛耳っている組織があり、その組織の力の拡大を恐れていることが理由です。
麻薬というのは強烈な中毒症状をもたらし、人はいつの間にかそれを手に入れるために生きるようになります。その人の意志が弱いのか、自分の意志ではどうにもならないのか、よく日本でも議論になりますよね。
その人の意志も全く無関係ではないでしょうが、おそらくそれを凌駕する中毒症状があるのでしょう。
麻薬をやったことのない人には決してわからないことですが、想像はできるかもしれません。
みなさん、「人類最古の麻薬」って何だと思いますか?
これは「砂糖」と言われています。
「砂糖」には強烈な中毒症状があり、過剰な接種は体に様々な害を及ぼします。まさに麻薬です。
甘いものがなかなかやめられないという人も多いのではないでしょうか?
明日から砂糖が違法になったら、止められなくて困る人がたくさん出てくるかもしれませんね。
それほど人を中毒症状にする麻薬というものは、違った観点から見れば一度使えば誰もが欲しくなる「世界で一番売れる最高の商品」ということになります。
そんな最高の商品「麻薬」が野放しになれば、麻薬組織が莫大な利益を上げていきます。その利益はそのうち国の財力より大きくなり、それは麻薬組織が国や政府よりも力を持つことを意味します。
そうなれば、麻薬組織が国を動かすことになります。政治家も警察も軍隊も麻薬組織が好きなように動かせます。国というものが正常に機能しなくなるのですね。
これは極端な例のようですが、メキシコなどはこれと近い状態になっているのではないでしょうか。
治安が悪いということは、海外の企業(外国資本)が入っていくことができない大きな原因になります。自国だけで経済を発展させる力がなければ、途上国から抜け出すことも不可能になります。
こういった「治安の悪さと経済の悪さの悪循環」をフィリピン国民たちはひしひし感じ、深刻にとらえているのです。そして、それをどんな手を使ってでも有言実行しているドゥテルテを多くのフィリピン国民が支持しているのは不思議ではなりません。
フィリピンのことはフィリピン人が一番分かっている
大統領の支持率の高さやフィリピンの国内事情、フィリピンでの滞在経験から感じたことは、「フィリピンのことはフィリピン人が一番分かっている。」ということでした。
麻薬撲滅のための方法が正しいかどうかは別として、フィリピンの抱える問題を体験して一番真剣に受け止めているのがフィリピン人なのは間違いないでしょう。
ドゥテルテ大統領の「麻薬撲滅戦争」でたくさんの無実の人が犠牲になっているとの事実もあります。無実の罪で殺された人の親族や友人の気持ちを考えるといたたまれなくなります。ただ、これくらい厳しく麻薬を取り締まらなければ、また違った犠牲者が出るのというのも現実です。
表面だけを見た先進国や国際機関の非難は、フィリピン国民からすれば問題の本質を見ていないただの野次のようなものかもしません。そして、海外に住む我々はメディアを通してその表面だけの情報に共感しがちです。
仮に、国際社会がフィリピンの麻薬撲滅運動を人権侵害としドゥテルテ大統領を退任に追い込んだとして、その後のフィリピン麻薬問題に真剣に取り組んでくれるかと言えば疑問です、そのときは多くの国や国際機関が知らんぷりになるような気もします。
自国が何か大きな問題を抱えたとき。やはり解決できるのは、一番真剣に考えている自国民である。これは個人にも置き換えることができるように思います。何か自分が問題を抱えたときや、迷っているときは自分の考えや意志というものを一番信じるのが最良の結果を生み出すのではないでしょうか。
私は色々な国に旅をしましたが、フィリピンは大好きな国のひとつです。フィリピン人のまるで子供のように屈託のない笑顔と人懐っこさが大好きです。
フィリピンが彼らにとって夢と希望を持てる国になることを心から願います。
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