キルギスでホームステイ 。マニュアルのないホスピタリティ~ジャララバード編その1

キルギス
ジャララバードのバザールにあった肉と野菜で作られた鳥の置物。
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旅をすることにおいて、何に重点を置くかというのは人それぞれ違います。

一般的にバックパッカーと呼ばれる人たちは限られた予算の中でやりくりしながら旅をしているため、安宿を探して旅を続けています。彼らの多くは最悪寝られて疲れが取れればよいというのが宿に対する考え方です。

私も限られた予算の中で旅をしていますが、私にとってどんな宿に泊まるかというのは非常に重要なことです。それは高級なホテルに泊まるとか、〇星のホテルに泊まるとかいう意味ではありません。その宿に働いている従業員、またはオーナーの人柄、ホスピタリティを重要視します。
私の旅の目的の一つとして、できるだけ現地の人とコミュニケーションをとって現地のことを知りたいというのがありますので、宿での従業員やオーナーがフレンドリーでホスピタリティにあふれているのは私にとってコミュニケーションの絶好の機会なのです。
もちろん、旅の情報も色々聞けますし、そこから人の輪が広がることもあります。

そんな私が一押しするのが、キルギスのホスピタリティの凄さです。
キルギスと言えば、「雄大な自然」がある国というイメージですが、私の体験上、それに「+ホスピタリティ」になります。

今回は、ジャララバード編その1です。
キルギス旅行で宿探しをしている方にも是非、参考にしてください。

 

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ジャララバードを簡単に説明


ジャララバードはキルギスの南西に位置します。首都ビシュケク、オシュに続いて第三の都市となります。
第三の都市だけあって、なかなかおしゃれなカフェや、ピザやハンバーガーなどの洋風のレストランもよく見られます。

ジャララバードの街並み(キルギス)

巻き寿司レストランもある。キルギスでは握り寿司はめったに見ない(ジャララバード)

ウズベキスタンの国境から近く、住民の50%以上はウズベク系と言われています。

ジャララバードにはこれといった観光はなく、多くの旅人がバスやシェアタクシーの乗り継ぎ地点として通過してしまいます。
しかし、ナリン州(ほとんどがキルギス系)や都会的なビシュケクからジャララバードに来た場合、まるで違った国に来たかのような感じが味わえます。また、ジャララバードの街の近くにはたくさん小さな町があり、安いシェアタクシーなどで簡単に行けます。街歩き好きの方は、せめて一泊くらいはしてもよいのではないでしょうか?

ジャララバードのバザール(キルギス)

ジャララバードに来ると、布のヒジャブ(イスラムの被り物)をして髪を隠している女性が一気に増える

ジャララバードバザールの肉屋のおじさん(キルギス)

ジャララバードのバザールの肉屋さん。ほとんど外国人観光客はみない。

ジャララバードバザールの乾物屋のお姉さん(キルギス)

ドライフルーツ屋のおねえさん。キルギス系だろうがウズベク系だろうが、キルギスに住んでいる人はフレンドリーな人が多い。

 

キルギス全体のことを知りたい方は下記のゆーさなさんのブログをご覧ください。日本との比較も載っていて解りやすく面白いですよ。

 

CBT(Community Based Tourism)

キルギスの各地域にはCBTという団体のオフィスがあります。
CBTというのは「Community based tourism」の略で、地域の旅行情報の提供やツアーや宿を旅行者に手配をしている団体です。有名な地域のCBTですとたくさんの旅行者たちが集まりお互いに情報交換をしている姿も見られます。
どうやらスイスのよく似た団体を参考にして作られたようです。キルギスの観光業を盛り上げるため、同じトレッキング観光国のネパールなどに出向いて勉強したり日々努力をしているとのことです。
非営利団体ではなく、旅行者から利益を取って運営をしているので若干各種サービスが高くなる場合もあります。
多少高くなっても、CBTが持っている情報を考えると旅行者には強い味方でしょう。

私はカラコル、コシュコル、ナリン、カザルマン、ジャララバード、アルスタンパブの6つのCBTに行きました。多くのCBTはフレンドリーなのですが、残念ながらコシュコルのCBTは少し商業的な感じがして好きになれませんでした。コシュコルは外国人旅行者も多く、徐々にそういう風になってしまったのでしょう。

ジャララバードのCBTは宿泊施設も兼ねており、ジャララバード滞在期間中はそこにお世話になりました。

 

快適な部屋と陽気なルフソーラ

その日、私は2人のドイツ人老夫婦とカザルマンからジャララバードに移動しました。

私の目的地はアルスタンバプでしたが、シェアタクシーをジャララバードで乗り換えなければいけません。
せっかく来たので、ジャララバードには一泊はしようと考えていました。

キルギスではアゴダやBooking.comで宿を調べても良い宿が出てこない地域が結構あります。そんな時に頼りになるのがCBTです。シェアタクシーのドライバーにジャララバードのCBTで降ろしてくれるように頼みます。

タクシーはジャララバード市内に到着しCBTに向かいます。しかし念のため、地図アプリ「MAPS.ME」を確認するとタクシーはCBTと違う方向に進んでいます。ドイツ人の老夫婦と一緒になってタクシードライバーに「CBTはこっちの方向じゃない」と言っても、ドライバーは頑なに言うことを聞きません。ロシア語なので何を言っているのかも分かりません。

着いた場所は砂利道に立っている大きな鉄の扉がある建物。どうみてもCBTには見えません。
ドライバーに「ここではない。」と再度伝えても、頑なに彼は「ここだ。」と言います。仮にここがCBTだったとしても、鉄の扉は閉ざされており中に入ることができません。

ドイツ人夫婦と私が呆れていた時、ドライバーに一本の電話がかかってきました。
どうやら電話の主は英語が喋れるみたいで、私たちと話がしたいと言っているようです。
電話の主は女性でした。彼女が言うには、「CBTはそこで間違いなく、つい最近古いオフィスから引っ越したばかり」とのこと。更に「スタッフは今外出中で、20分以内に戻ってくるからそこで待っててほしい。」と。

ドイツ人夫婦と私は半信半疑で待つことにしました。タクシーは「ほらみろ。俺が正しかっただろう。」というような自慢げな顔で去っていきます。
この辺りは住宅地でもあり、CBTと言われる建物の前の砂利道をたくさんの地元の住民の人たちが通り過ぎてきます。何人も住民が通り過ぎますが、CBTのスタッフと思われる人は現れません。

ちょうど20分が経つ頃、砂利道の向こうから大きな買い物袋を両手に持ったヒジャブを被った女性が歩いてきました。
また住民の人かと思ったとき、彼女は私たちに話しかけてきました。
「ごめんごめん。待った?ちょうどバザールで買い物をしててん。」
(※関西弁にしているのは、彼女がなんとなく大阪のおばちゃんっぽく、彼女のイメージを伝えるためです。)

彼女の名前はルフソーラ。ジャララバードのCBTの責任者でした。年は45歳でちょっと小太りのウズベク系キルギス人です。(残念ながら、頑なに拒まれたので彼女の写真はありません。。。)
ここのCBTのスタッフは彼女一人しかいません。にも拘わらず営業中に買い物。でも初対面の時から何か憎めない人物でした。

ジャララバード CBT Office(キルギス)

ジャララバードの新CBTオフィス。全くCBTと分からない。よく見ると右の扉の上に垂れ幕が。この垂れ幕に「CBT」と書いてあった。垂れ幕を下ろさないと意味がないよ。。。(ジャララバード)

ようやく私たちがCBTの中に入ると、ルフソーラは私たちのためにお茶を淹れてくれ、お菓子とバザールで買ってきたばかりのフルーツをテーブルに乗りきらないくらい置いて私たちを歓迎してくれます。
キルギスではよくあることなのですが、何かというとお茶屋お菓子、フルーツを振る舞ってくれのですがその量が半端ではありません。

ドイツ人夫婦はジャララバードには滞在せず次の目的地オシュに行くということなので、バスターミナルまでのタクシーだけ手配をしてもらって去っていきました。
私は一泊するつもりだったので、ルフソーラにこの辺にホームステイができるところはないかと聞きます。
すると、ルフソーラはここに泊っていけば良いと提案してきました。どうやらここのCBTは宿泊施設も兼ねているようです。部屋を見せてもらうと完全なプライベートルームでスペースも広くかなりきれいです。そのためお値段も普通のゲストハウスよりは高め。
残念ながら予算オーバーということを告げると、すぐにルフソーラは「30%割引してあげるし泊ってったらいいやん。」と言ってくれます。海外でよくある、最初に値段を吹っかけておいて後で値段を下げるという感じではありません。
ここらへんの相場と宿の部屋のクオリティを考えても、ルフソーラの提案してくれた価格はかなり安いものでした。彼女の提案を快く受け入れることにしました。

ジャララバードCBTオフィス(キルギス)

ジャララバードCBTオフィスの宿。清潔で広さも十分。(ジャララバード)

ジャララバードCBTオフィス(キルギス)

ダイニングも広くて快適。お茶もコーヒーもフリーで飲めます。(ジャララバード)

 

頼んでもいない夕食

しばらく部屋でリラックスしていると、「明日の朝ごはんは何がいいん?」とルフソーラが聞いてきます。
ルフソーラと私は同じ年なのですが、なんだかお母さんのようです。「何がいいと言ったって、朝食のメニューは決まっているものなんじゃないの?」と聞き返すと、ルフソーラは「好きなもの作ったるで。」と言います。
しばらく主食がパンや麺ばかりだったので、私は「白ごはん」と「卵焼き」を頼みました。キルギスでは白ご飯はあまり一般的ではないので、作るのが面倒くさいだろうなと思っていたのですが、ルフソーラは笑顔で「任せとき!」という感じです。

その後、キッチンでパソコン作業をしているといつの間にか夕食の時間になってしまいます。
宿には朝食は付いていますが、夕食は付いていないのでどこかに食べに行かなければなりません。どこに行こうかスマホで探していたころ、ルフソーラが料理の乗った皿を運んできました。
「ちょうど私たちの晩御飯の時間やしな、あんたの分も作っといたで。」

キルギス料理の夕食(キルギス)

スープの中のピーマンの中にはご飯と肉が詰まっており絶品。結局ルフソーラは毎晩夕食を作ってくれました。(ジャララバード)

頼んでもないのに、彼女は無料で晩御飯を作ってくれました。さすがに悪いと思いお金を払おうと思っても、「そんなもんええがな!はよ食べや!」と言ってお金は受け取ってくれません。
日本でも家庭の味は美味しいのと同じく、ここキルギスでも家庭の味はレストランの味よりずっと美味しいです。誰か特定の人のこと考えて作るのと、不特定多数のために作るレストランではどこか味が変わってしまうんでしょうね。

 

暴れん坊将軍、ルフソーラの息子たち

ありがたく夕食を食べていると、庭から子供の遊び声が聞こえます。庭に出てみると元気な二人の子供が走り回ったり、ボールを蹴ったりして遊んでいます。遊んでいるというか暴れているという方が正確かもしれません。一人の子はハンマーを振り回してはしゃいでます。相当な暴れん坊です。

彼たちはルフソーラの子供。長男の名前はユヌス、次男はソードゥックと言います。ルフソーラの旦那さんはロシアに仕事に行っていて、彼女が二人の面倒を見ています。ここのCBTはルフソーラのおばさんの持ち物で、ルフソーラが責任者です。私は、夜になればルフソーラは自分の家に帰ると思っていたのですが、ここが自分の家だったようです。毎日朝8時ごろ、子供たちを学校に連れて行き、夕方の5時ごろ迎えに行きます。

ルフソーラの息子たち(ジャララバード)

次男のソードゥック(写真左)と長男のユヌス(写真右)。

彼とルフソーラの食卓は、庭です。子供のおままごとセットのような小さなテーブルと椅子に座って食事をとります。
既に息子たちは夕食を食べ終えているのかと思えば、少し食べては遊び、少し遊んでは食べてを繰り返しているようです。ルフソーラに「怒らないの?」と聞くと、「まー、たまには怒るけどな。でもええやん、男の子やし。わがままはあんけど、元気なのはいいやん。 発散させてあげんとね。」
私の場合、ついつい躾のことを考えてしまいますが、案外と子供たちのパワーを無理やり押さえつけないルフソーラの教育方法もアリかなと思ってしました。
ルフソーラの子供に限らず、キルギスの子供は本当に元気に外で遊んでいます。元気というかたまには狂乱状態になって叫んで遊びまわっている子も見ます。もちろんマナーや礼儀というものは大切かもしれませんが、どこかでパワーをうまく発散させてあげないと、いつか暴発する可能性もあるなと思います。それは子供に限らず、大人も一緒かもしれません。

 

食べきれない量の朝食

翌朝、私を起こしてくれたのはスマホのアラームではなくルフソーラでした。
「朝食できたでー!はよ起きや!」

まだここに来て24時間も経ってないのに、なんだか既にここの家族の一員になったような気分です。
ダイニングに行くと、すでに朝食の準備が出来ていました。
昨日、約束していた「白ごはん」に「卵焼き」。
それに加え、
盛りだくさんのフルーツにスモークチーズ。
美味しそうな新鮮サラダ。
更にご飯があるのにパンも?
チョコレートにクッキー?
だんだんとおかしくなってきました、、、。

ジャララバードCBTの朝食(キルギス)

組み合わせが少しおかしい。。。朝ご飯の量ではない。でも美味しくいただきました。

白ごはんは少し芯が残っていましたが、ルフソーラが一生懸命作ってくれたと思うと美味しく食べれました。
さすがに量が多すぎて、パンやお菓子には手を付けられませんでしたが。
すると、ルフソーラは「なんや、あんた少食やな。」と一言。
結局、この宿には4泊することになったのですが、毎日王様気分の朝食でした。

~キルギスでホームステイ 。マニュアルのないホスピタリティ~ジャララバード編その2につづく~

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