「現役時代は、満足いく収入を得ることが難しい。」
「引退後も、安心して生活できるか分からない。」
「そもそも引退もできず、働き続けなければいけないかもしれない。」
年金問題や終身雇用の崩壊などにより、現在の日本は経済的な不安要素が渦巻いています。
そういう事情もあって、お金の話がタブーとされてきた日本でも、ようやくお金の稼ぎ方や使い方の議論が活発になってきました。
しかし経済力が落ちたといっても、日本はいまだ世界トップクラスの経済大国です。
それなのに、これだけの閉塞感があるというのは、実際の経済の不安定よりも、精神的な不安が大きいのかもしれません。
今回紹介するのは、私の友人であり、「アリズ コピルアク」のオーナー、Ali Sayid氏(以下、アリ氏)のお金の使い方です。
これは儲かるとかそういった話ではありません。
視点を変えた、有意義なお金の使い方の紹介です。
世界で最も希少で高価なコーヒー(コピルアク)を作り続ける男
アリ氏は、1971年にインドネシアのジョグジャカルタに生まれました。
ジョグジャカルタはインドネシアの古都で、日本でいえば京都のような感じです。
自然が豊かで、人が優しくとても素敵なところです。
日本からの直行便がないので、そこまで日本では有名ではありませんが、インドネシア人にとって人気の観光地でもあります。
1981年、アリ氏のお父さんが近所の人たちに飲んでもらうためにコピルアクを作り始めます。
コピルアクとは、ジャコウネコがコーヒー豆をそのまま飲み込み、排出された糞からその豆を採取してできるコーヒーです。映画やテレビでご存じの方もいらっしゃるかもしれないです。
作り方を聞くと「えっ!?」っと思うかもしれませんが、チョコレートのような香りでとても飲みやすくまろやかなコーヒーです。
お値段は、東京の赤坂プリンスホテルでは一杯一万円以上!
世界で最も希少で高価なコーヒーといわれています。
学校を卒業後、アリ氏はフランスの有名ホテルのレストランで働いていましたが2006年に帰国。
お父さんのコピルアックを引き継ぎました。
今では、インドネシア国内だけではなく、日本やヨーロッパにも輸出しています。
(コピルアクについて詳しく知りたい方は下記の記事をどうぞ)
売れない絵描きをサポート
アリ氏の自宅に行くと、ところ一面に飾られた絵画に驚かされます。
アリ氏の奥さんが絵描きさんなので、はじめはてっきり彼女の作品だと思っていました。
でもよく聞くと、色々な画家さんの絵であるとのこと。
たしかに私が彼の家にしばらく滞在していた時も、何人かの画家さんが絵を売りに来ていました。
「最近は飾るところがなくなって困ってるよ。はははっ!」
と笑いなが言うのが、彼の口癖です。
ある日、彼に尋ねました。
私:「そんなに絵が好きなの?」
アリ氏:「別にそこまで好きじゃないけどね。」
私:「飾るところも無いし、もう買うのやめたら?」
アリ氏:「彼は売れない画家で、お金がもうなくて、明日から暮らしていけないんだ。」
アリ氏:「彼には絵を描き続けてもらいたいからね。はははっ!」
というのとも、ジョグジャカルタは芸術の街として有名な場所です。
絵描きに限らず、ミュージシャンや色々なアーティストが必死に自分の夢を追求しています。
彼らが芸術活動を続けられるように、応援して守らなければいけない。
ジョグジャカルタが素敵な芸術の街なのは彼らのおかげだ。
国や地方単位でやるのではなく、個人でやっているのです。
投資と人助けを兼ねたお金の使い道
私:「ボランティアみたいなものだね。」
アリ氏:「ボランティアじゃないよ!彼らが有名になれば買った絵は何十倍、何百倍にも売れるからね!はははっ!」
アリ氏は生粋のビジネスマンです。
彼にすれば投資と人助けの両方を兼ねたお金の使い方ということです。
・絵描きさんにお金を払った時点で、心が豊かになる。
・絵がもし高く売れるようになれば、ふところが豊かになる。
アリ氏「こんな良いお金の使い道はないじゃないか!はははっ!」
彼は、私にも絵を買うように勧めました。
しばらく旅を続けなければいけなかったので、さすがに絵を担いで旅をするわけにはいけません。
でも、ほんとうは、仕事も辞め先行きも不安定な中でそんなお金は使えないというのが正直な気持ちでした。
アリ氏:「なんで、日本人は他人のためにお金を使わないんだ?」
彼は日本人の友達が何人もいますが、これが彼の日本人の印象みたいです。
正直、ムカッときた私は心の中でつぶやきました。
私の心の声:「みんな自分の生活で精一杯なんだよ!それに自己責任という考えがあるからね!」
でも、自分の生活に余裕ができたらそうするかというと、それもやるのかなと思います。
そもそも、いくらお金があっても不安に思うのが日本の現在の世の中です。
残念なことに、「世界で一番やさしい国ランキング(2017年)」で日本は、137か国中111位です。このランキングは「寄付金の額」「ボランティアへの参加」「見知らぬ人を助ける」の3項目で「他者への寛大さ」を測定したものです。
下記のきふるさんのブログで詳しく説明しています。
まとめ
お金は「どれだけ稼ぐか」の幸せへの影響度より、「どう使うか」の幸せへの影響度の方が大きいような気がします。
今までは貯金さえしておけば安心でしたというのが日本では定説でした。
多かれ少なかれ、親に「貯金をしっかりしなさい」と言われた方も多いのではないでしょうか?
しかし、「貯金だけで本当にいいのだろうか?」と思い始めている人も多くなっている気がします。
事実、経済不安が高まっていくにつれ、日本でもようやく投資というお金の使い方が少しずつ浸透してきました。
最近では、国が国民に推奨するくらいです。
長い間、日本ではお金の使い方の選択肢が少なかったのです。
そろそろ、日本でも本格的にお金をどう使うかを考えたり、教育したりしたほうが良い時期に来ているように思います。
お金の使い方に正解はありません。
ただ、お金の使い方の選択肢はたくさんあったほうが良いと思うのです。
アリ氏が行っている「夢を追求している人へのサポート」というのは、良いお金の使い方の一つの選択肢かもしません。
誰かをサポートすることによって心が豊かになり、心の豊さは、ありとあらゆるものを解決してくれる可能性があるかもしれないからです。
(アリ氏のコピルアク。「アリズ コピルアク」公式サイトは下記リンクから)
コメント